伝説のロック・ミュージカル『ファントム・オブ・パラダイス』(74)、ホラーの金字塔『キャリー』(76)、ヒップホップ・カルチャ ーにも絶大な影響力を誇る『スカーフェイス』(83)、そしてハリウッド大作の『アンタッチャブル』(87)や『ミッション:インポッシブル』(96)など数々の傑作、話題作で知られる鬼才監督、ブライアン・デ・パルマ。そのジャンルレスな作風こそがデ・パルマの持ち味ではあるが、彼の真骨頂は変態的、偏執的なまでの映像テクニックを駆使して浮き彫りとなる痛切な愛の物語にある。それ故、世代を超えてカルト的なファンを増やし続けているデ・パルマの日本で一番最初に紹介された作品であり、デ・パルマ美学の頂点とも言える『悪魔のシスター』が初のデジタルリマスター版でリバイバル公開。殺しの現場を覗き見てしまった女性記者、おぞましい過去に支配されるファッションモデル、彼女に異様なほど執着する男。彼らの倒錯的な関係が毒々しい映像美で描かれ、やがて流血と疑惑と恐怖が渦巻く驚愕の世界へと観る者を誘っていく。
主人公のモデル、ダニエルを演じるのは、後に『スーパーマン』(78)のヒロインを演じたマーゴット・キダー。ダニエルにつきまとう男エミール役には、『ファントム・オブ・パラダイス』のファントム役はじめ、デ・パルマ作品の常連として活躍した怪優ウィリアム・フィンレイ。その眼差しと表情は、いちど見たら忘れられない強烈さ。音楽はヒッチコック作品のほか『市民ケーン』(41)、『タクシードライバー』(76)などを手掛けた名作曲家バーナード・ハーマン。
公開当時「『サイコ』以来の最高の恐怖映画」「第一級のミステリー・サスペンス」と称賛されたスリラー映画でありながら、精神的、社会的に抑圧下におかれた女性映画という側面も持つ本作。デ・パルマによるめくるめく悪夢と、その戦慄の結末をこ賞味あれ。
モデルのダニエルは、テレビ番組のエキストラ役をきっかけに知り合った青年と一夜を過ごす。翌日、向かいのアパートに住む女性記者グレースは、青年がダニエルの部屋で惨殺されるのを目撃。独自に調査を開始 したグレースは、ダニエルには実は妹がいて、結合双生児として生まれていたことを知るのだったが、それは本当の恐怖に飲み込まれる一歩だった…。